昭和24年の6月3日に測量法が公布されたことから、この日を『測量の日』として定められました。私たちが地球上、国土において土地を利用して暮らしていくうえで、正確な測量、地図作りはその原点となる重要なものです。しかしながら、測量や地図作りについて一般の人には広く知られていないことから、当時の建設省が主唱して平成元年に『測量の日』として定められました。
私は、この時期になると映画“劍岳 点の記”を観ることにしています。この映画は、新田次郎の同名小説を原作として制作され、2009年に公開されました。そのストーリーは、明治時代末期、当時の陸軍陸地測量部(今の国土地理院)の測量隊が、五万分の一の国土地図が未完成であった北アルプス一帯の地図を完成すべく、それに必要な三等三角点網を設置、観測するため、山岳案内人らとともに、信仰の山として恐れられ、厳しい自然が人々を寄せ付けなかった、当時は未踏の山と言われていた立山連符の最難関である劔岳に登頂し、日本地図を完成させ礎を作ったという実話をもとにしたものです。
この映画の魅力の一つには、立山連峰の壮大な地形や豊かな自然を迫力ある映像で伝えていることがあります。特に、蒸し暑くなるこの時期には涼を感じることが出来ますので、皆さんも梅雨の鬱陶しい時期に、是非ご覧になってください。私が、この映画で最も感銘を受けたのは、大自然と様々な困難と闘いながら、自らのミッションを果たすことだけに全身全霊を捧げる職業人の生き様です。測量技師は“ただ地図を作るために”ひたむきに挑み、それを支える山岳案内人は“安全に登頂を導くことだけ”に全身全霊を捧げる姿です。物質的に豊かになりすぎた現代社会、私たちに対し、プロとして矜持を持って働くことの大切さを教えてくれる物語です。
『測量の日』は、私たちの仕事の原点である測量の大切さを多くの人に知ってもらう機会とすると同時に、私たち自身にとっては、測量・建設コンサルタントの仕事、職業に誇りを持ち、プロとして職業意識と知識を高めることを肝に銘じる日とする日であると思います。この思いを揮毫していただきました。『自分の道を生きる勇気』です。
和田晶夫