今日、6月3日は『測量の日』です。昭和24年6月3日に測量法が公布されたことから、平成元年にこの日を『測量の日』として定めています。私たちの産業を象徴する日として位置づけられています。
日本の歴史上で、本格的な測量を行ったとされるのは、今から200余年前に、伊能忠敬が天文観測と歩測や検縄等による地道な距離計測により、正確な日本地図を作ったのが多くの人に知られています。伊能忠敬は当時では多くの人が隠居生活を過ごす55歳から17年の歳月をかけ、晩年は自らの病と闘いながら、険しい海岸線や道なき山野を歩き、地道な作業の繰り返しにより、偉業を成し遂げました。還暦を迎えた私にとって、尊敬する偉人であります。
近年、測量技術は急速に進歩しました。私が測量と出会ったのは、今から40年ほど前です。その頃の測量は、距離計測は鋼製巻尺、平面測量はアリダートを用いた平板測量が主流で、原始的で時間を要する作業でした。測量計算では、コンピューターが普及しておらず、関数電卓が出始めた頃で、座標や曲線の計算も全て手計算で行っていました。ちょっとした不注意や些細なミスで全ての作業がやり直しになるため、地道で根気を要する作業が苦手だった私にとって、先輩にご迷惑をかけ、自分自身も苦労した苦い思い出がたくさんあります。
現在の測量は、測量機器の中心であるトータルステーションは自動観測が一般的になり、GNSS測量、レーザー計測などが急速に進歩し、精度と生産性が格段に向上しました。技術革新により、四十年前には想像できなかった自動化を遂げています。しかしながら一方で、技術の継承と形骸化が懸念されています。システムや機器に頼りすぎると、理論や過程が分からないまま容易に成果が得られますが、大きなミスに気付かないことや仕事の全体像が見えないことから、トータルとしての品質や工程管理に問題をきたすことにつながります。このことは測量だけではなく、私たちが行う構造計算、地質解析などでも同様であると思います。
今日の『測量の日』に、先人の努力により技術革新を遂げて今があることに感謝すると共に、自動化やシステム化が進む現代にあって、私たち技術者は、地道な積み重ねとひとつ一つの工程や作業の意味を十分に理解して行うことの大切さを知る日といたします。
和田晶夫