今から20年ほど前ですが、ある大手ゼネコンが『地図に残る仕事』(※注)というキャッチコピーで、建設産業と企業のイメージアップPRをしたことをご記憶の方もいらっしゃるのではないでしょうか。インパクトのあるコピーで、現在でも使われています。私はこのコピーを最初に聞いた時、建設コンサルタントの仕事は正に『地図に残る仕事』(※注)の原点にあるものであると感じ、このコピーに共感し、仕事をする上でのモチベーションになったことを覚えています。
この十月は好天に恵まれたので、ドライブがてら20年以上前に関わった道路や公園を訪ね
てみました。当時、未熟ながら、多くの人に助けられ、迷惑をかけながらも仕事をやり遂げた懐かしい記憶が甦りました。それと同時に、設計した施設が、秋晴れの豊かな自然に溶け込み、地図に残っている風景を見て幸福感に浸ることが出来ました。また、残念ながらお亡くなりになりましたが、尊敬する先輩が設計された公園、広場が多くの人で賑わっている様子を目にして、先輩を偲ぶとともに、その施設が時を越えて生きている様子、今後も生き続けるであろうことを考え、しばし至福のひと時に浸り、この上の無いありがたさを感じました。
私たちの仕事は、社会インフラの整備や維持に関わるもので、時を越えて地図に残る物を創造する、夢とロマンあるものです。それ故、大きな社会的な責任を担っているとも言えます。
最近、マンションの基礎工事のデータねつ造が大きな社会問題となっています。具体的な内容や影響を及ぼす範囲はまだ明確になっていませんが、一企業の信用失墜だけではなく、建設産業の信用の根幹に影響を及ぼす残念な出来事です。この問題について、建設産業の構造にも問題があるように言われていますが、それ以前に、企業、技術者が仕事の全体像、目的や意味を分かっていないこと、仕事をする上での誇りや使命感を無くしてしまっていることに問題があると思います。
私たちの仕事は時を越えて『地図に残る仕事』(※注)です。社会、未来に対する大きな使命と責任を担っていることをひとり一人が自覚して、技術者としての誇りと強い信念、情熱を持って業務にあたりましょう。
※注:文書中に表示してある 『地図に残る仕事』 は、大成建設(株)が商標権を有しています
和田晶夫