今月23日には、待ちに待った東京オリンピックが開会します。私はオリンピックイヤーの1960年ローマ大会の生まれです。1964年の東京オリンピックの時は4歳ですので全く記憶がありません。記憶に残っているのは男子体操が表彰台を席捲し、マラソンの君原さんが銀メダル、サッカーでは釜本さんの活躍で銅メダルを獲得した1968年のメキシコ大会からです。以後、前回のブラジル大会まで、日本人選手の活躍や数多くの名シーンに感動しました。皆さんも感動のシーンや記憶に残るアスリートがいらっしゃることと思います。私にとって印象に残るアスリートは、女子マラソンで92年のバルセロナで銀メダル、96年のアトランタで銅メダルを獲得し、レース後のインタビューで「自分で自分を誉めたい」と語った有森裕子さんや、2000年のシドニーで金メダルを獲得し、その笑顔が多くの国民から親しまれ、女子スポーツ界で初めて国民栄誉賞を獲得した高橋尚子さんがいます。
この名選手二人を育てたのが一昨年に逝去された小出義雄監督です。小出監督は“豪放磊落”そのもののキャラクターで、お酒好きの赤ら顔、情熱的で飾らない姿がメディアで取り上げられることも多かったので、多くの国民から親しまれました。その小出監督は『なんで?と思うな。せっかく、と思え』という教えを残されています。その意味するところは、この世で起きることに意味のないことは何もない。どんなことが起きても『なんで?』と悲観的になるより、起きたことを受け止め『せっかくと思う(チャンス)』ことで道が切り開かれるということです。この言葉により、故障が多かった有森さんは『何度となく故障しても立ち向かう勇気をもらった』と語っています。
コロナ禍が続きますが『なんでコロナ?と嘆くより、コロナ禍であっても、出来る生活を楽しむこと』や『なんでオリンピックをやるの?と否定的になるより、一生に一度しか開催されない自国でのオリンピックを、せっかくの機会ととらえ、みんなで工夫をし、力を合わせて開催する』方が物事を好転させることになると思います。
私たちは『ATM(明るく、楽しく、前向き)』を共通の価値観としています。小出監督の『なんで?と思うな。せっかく、と思え』という教えは、まさに『ATM』を実践するための源となるものです。
世界中から集まるアスリートから勇気と元気をもらい、世界がコロナ禍を乗り越える東京オリンピックとなることを期待しています。
和田晶夫