昨年の東京オリンピック招致活動のプレゼンテーションで、滝川クリステルさんが行ったスピーチは皆さんも印象深かったのではないでしょうか。流暢なフランス語のスピーチの締め括りに、手振りを交えて日本語で“お・も・て・な・し”と表現したのは、諸外国に対して日本の良さを発信すると共に、私たち日本人にも心地よいインパクトを与えたと思います。
『おもてなし』とは、「持て成し」に丁寧語の「お」を付けた言葉であります。「持て成し」とは「客人に対する扱い、ご馳走」「人やものに対する振る舞い方や態度」を意味するものであります。「持て成し」に「お」をつけ『おもてなし』になると、意味が発展し「お客様に対する心のこもった接遇、歓待、サービス」ということを表します。
私の好きな諺で『一期一会』という言葉があります。この諺は日本の伝統文化である茶道に由来したもので「その瞬間を人生で一度の機会と思い、できる限りの最高の行動や振る舞いを行う」という教えであります。私は、この思想こそが『おもてなし』の源流にあると思います。
日本人の生活には、歴史、伝統に根付いた素晴らしい『おもてなし』の精神が宿っています。また同様に、日本人の仕事にも『おもてなし』の精神が根底にあります。伝統的なもの作りは勿論ですが、車や最新のIT機器にも受け継がれ、使い手の気持ちに立った工夫が施されています。高級旅館、飲食店には伝統を受け継ぐ最高級の『おもてなし』が活きています。また、高級店に限らず、大衆的な飲食店や商店等の接客にもそれぞれのお店らしく相応しい『おもてなし』を創っています。ネットショップにおいても顔の見えないお客様に対し、様々な工夫が施されています。
業種に関係なく、日本人らしいプロの仕事とは、お客様に常に『おもてなし』の精神で向き合い、満足や感動を差し上げることであると思います。
私たちの仕事においても常に『おもてなし』の心でお客様、地域の方と向き合うことが大切です。私たちの『おもてなし』とは、察して対応すること、適切な提案、期限より早めに、スピード感、タイムリーな対応、良好なコミュニケーション等であると思います。
私たちは忙しくなるとお客様への対応がついつい御座なりになる傾向にあります。お客様からのクレームの原因は『おもてなし』の心が欠如した時に多く発生しています。
多忙な年度末を迎えますが、プロの仕事とは、常に『おもてなし』の精神を持ち続けることであると自覚し、お客様、地域に喜ばれる最高の仕事を実践してまいりましょう。