昨年一月に経営破たんしたJALの再建を担ったのは、京セラ、KDDIを創業され、最後のカリスマ経営者と言われた稲盛和夫氏であります。
稲盛さんは私の尊敬する経営者の一人でもあり、どのような手法でJALを再建されるのか注目していました。しかしながら、正直なところ、稲盛さんの経営手法はテクニカルなものではなく、精神論が主体であることから、その手法が一度破綻した巨大組織、しかも多くの労働組合が存在するJALで通用することに疑問感を持っていました。
稲盛氏は、破綻後の二月に就任されてから一貫して社員の意識を変えることに重点を置き、「思い」の重要性を説き続けられました。「思い」とは、「公明正大な目的や高い目標を持ち、それに対し利他的で、強い気持ちと願望を持つ」ということであります。
社員を前に自らの哲学である「利他の心、心を高める経営、人・企業はどうあるべきか」という事を話し続けられ、経営再建に対する強い思いや、使命感を説き続けられたようです。当初はその精神論的な講話に違和感があったようですが、徐々に理解が得られ、受け入れられるようになるとそれと共に業績が回復していったようです。
JALのV字回復は、外国人、経営コンサルタントのテクニカルな理論や手法ではなく、航空業界の素人が「思い」の大切さを説くことにより、組織が生まれ変わり、成し遂げられたと言ってよいと思います。この「思い」を大切にするのは日本人の素晴らしい伝統であると思います。
先のサッカー女子ワールドカップでは“なでしこJAPAN”が見事な優勝を飾り、国民に対し、大きな希望と勇気、感動を与えました。明らかに実力差、体力差のあるアメリカ、ドイツチームを破り、優勝できたのは「思い」の強さであると感じました。キャプテン・澤選手は「女子サッカーの未来を何としても切り開く」という公明正大で高い目的を掲げ、それが強い「思い」になりメンバーを引っ張り、「あきらめない力」になったと思います。
決勝で戦ったアメリカの選手は戦いを振り返って「日本には“念願と希望”という強力な12人目のプレイヤーがいた。彼女らは絶対的あきらめなかった」と述べています。
日本は厳しい情勢にある中で、女子サッカーの快挙は、震災からの復旧、復興が日本人の持っている「思い」の強さで果たすことができるという大きな自信になったと思います。
地震、津波、豪雨等の被害が各地で出ている中で、私たちは何不自由なく生活できていることに感謝しなければなりませんが、そのなかでも現状に満足することなく使命感を持ち、明日を見つめ、ひとり一人が強い「思い」を持ち、経営理念を共有し、自らの目的・ビジョンに向かって歩んでまいりましょう。
『知足者富 強行者有志』
暑さ厳しい8月を迎えました。また、業務も本格的にスタートし、多忙な時期を迎えます。まずは体調に留意し気力を充実して乗り越えましょう。