この夏もたいへんな猛暑となりました。松江気象台の観測データでは、8月の猛暑日(最高気温35度以上)は7日を数え、熱帯夜(最低気温25度以上)は22日を数えました。猛暑日は昨年を下回りましたが、熱帯夜は昨年と同日数を記録していますので、世界的にも記録的な猛暑となった昨年に匹敵する暑い8月だったと言えます。
この暑い8月を更に熱くしてくれたのが、大社高校の甲子園での躍進です。先月には、この場で32年ぶりの甲子園出場についてその喜びをお話しして、地域が一体となって応援することで素晴らしい歴史の一頁となることを願う旨をお話ししました。それは甲子園出場を純粋に喜んだもので、今思えば、たいへん失礼なことではありますが、良い試合をして欲しいという思いであり、決して勝利を挙げることを期待するものではありませんでした。(この場を借りてお詫びしなければならないと思います)
しかしながら、大社高校は甲子園の大舞台で小説や映画に匹敵するようなドラマを演じてくれました。高校野球ファンには名の知れた全国区の強豪校である兵庫の報徳学園、長崎の創成館高校に続き東京の早稲田実業を撃破する快進撃を遂げました。大社高校の選手は、強豪校に物おじすることなく、ミスを恐れず、犯した時もフォローしあい、自分たちの野球をひたむきに行った結果の勝利でした。その原動力は、選手や指導者たちの努力なくして成し得ないことではありますが、アルプス席で繰り広げられた大応援が彼らの大きな支えとなったと思います。
私は、甲子園での戦い4試合すべてをアルプス席で応援しました。無我夢中で声をあげ、メガホンを叩き、タオルを振り続けました。後から考えると、自分のどこにそのようなエネルギーがあるのかと思ったほどです。勝利の瞬間にはその感動に涙して校歌を歌いました。残念ながら、その空気感をお伝えする表現力を持ち合わせていませんが、アルプス全体が『のぼせもん』となっていたように思います。
『のぼせもん』とは、出雲弁で「夢中になるがあまり我を忘れる人」というような使い方で、揶揄する表現で使われることもありますが、良い意味では「熱中する人」「夢中になる人」のことを表します。今回の夏の甲子園での大社高校の躍進は、ひたむきに戦う選手たちの姿に応援席、地域が共感し『のぼせもん』が生まれ、その姿を見た人も『のぼせもん』となって『のぼせもん』の和が広がりました。その結果、メディアや球場関係者から「今年の甲子園大会での応援は大社高校が最も素晴らしかった」と評価されました。
私たちが仕事を行う上で、計画的に行うことや冷静沈着に物事を運ぶことが大切です。しかしながら、緊急時や重要な節目には『のぼせもん』になって、無我夢中、時を忘れて取り組むことも必要です。
大社高校が大社、出雲、島根の素晴らしさを全国に発信してくれました。私たちは『郷土愛』を持って、時として『のぼせもん』になり、地域や社会に喜ばれ、役に立つ仕事をしてまいります。
和田晶夫