私ごとで恐縮ですが、先日初孫が誕生し、おじいさんの仲間入りをしました。『孫は目の中に入れても痛くないほど可愛い』という諺があるよう、諸先輩から、孫は無性に可愛いものであるという話を聞いていました。今はまだ、そのような実感や境地に至ってはいませんが、ただ、子どもが子どもを産んだことに時の流れと、言いあらわせない不思議さを感じています。また、娘が母に変化した仕草や様子を微笑ましく見ています。
さて、初孫の誕生を契機に思い出したのが、私の好きな書家であり、詩人でもある“相田みつを”さんの『自分の番 いのちのバトン』という詩です。
『自分の番 いのちのバトン』
父と母で二人 父と母の両親で四人
そのまた両親で八人
こうして数えてゆくと十代前で千二十四人
二十代前では? なんと 百万人を越すんです
過去無量のいのちのバトンを受けついで
いま ここに 自分の番を生きている
それがあなたのいのちです それがわたしのいのちです
私は、この詩から、命の大切さ、尊さを感じるとともに、今の私たちがあるのは、ご先祖さまや親、無数のご縁やお陰があってのことであると強く感じます。また、今というのは長い歴史と未来の中でほんの一瞬であり、途切れることなく、良い形で次代へ繋げることの大切さを教えられる詩です。
私たちの会社、仕事においても同様です。多くの先人が苦労して築き上げてきた実績と信頼により今の私たちが支えられています。今の私たちは、社会やお客様の期待に応える素晴らしい仕事をし、次代に信頼と実績のバトンを繋いでいかなければなりません。多くの人が、駅伝やリレーといった“繋ぐ競技”に感動するのは、次の選手に必死に繋ごうとする選手のパフォーマンスから、繋げることの難しさや尊さを感じるからではないかと思います。
最近、名立たる企業の不祥事が報道されています。私たちが仕事をする上で、今だけ、その場だけを考えると、大きなミスを犯すことになります。一つのミスにより、会社は、積み重ねてきた信用を一瞬にして失うことになります。今を担っている私たちは、先人に敬意を表し、社内の英知を結集して、常に良い緊張感をもって仕事にあたり、未来に良い形でバトンを繋いでまいりたいと思います。
和田晶夫